2018/04/25

ターナーとサブライム

4月24日から東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催される「ターナー 風景の詩」展。その前日にプレス・ブロガー内覧会が行われ、参加してきました。

毎日新聞 2018/4/23 ターナー展「風景の詩」新宿で24日開幕

スコットランド国立美術館群のジョン・レイトン総館長。「レイトン卿」と呼ばれていました。

最初に大きな風景画の説明があります。これらは大金持ちのパトロンの依頼で描いたもの。そういう絵は通常はつまらない絵になるが、ターナーは違い、一つの「作品」になるのです。この写真で右の絵 «ソマーヒル、トンブリッジ» のなかで所有者の邸宅は中心として描かれているのではなく、風景の一つとして、前景の水面から視線を移動させていくと現れるように描いています。

ターナーは日本では水彩画で有名です。夏目漱石の小説にも出てきますね。しかし、それだけではなく、様々な手法を使った作品があることがわかりました。左の写真は、ヴィニエットと呼ばれる挿絵です。また、版画作品も多く出しています。19世紀はじめ複製技術が発展し、その中でターナーは、自分の絵を買えないような一般市民にも親しんでもらうため、そしてまた版画も表現は違うが芸術作品として認識しており、積極的に取り組みます。そういえばロートレックも同じような考えで版画に取り組んでいたのでした (→ パリ・グラフィック展)。

版画も、ライン・エングレーヴィング、メゾティント、エッチングなど様々な方法を使います。描き方も、ハイライトを出すため一旦塗ったところを削るスクレイピングアウトやスクラッチングアウト (違いはよくわかりませんでした) など様々な技法を用いています。作品で使っている技法や画材の解説がキャプションの横に掲示してあります。それを読んでいくのも楽しいと思います。

イタリアの風景の章では、当時イギリスの上流階級の子弟の卒業時の卒業旅行としてイタリアへ行くことが流行し、これをというと言っていました。スコットランドやウェールズの風景の章では、厳しい自然を目の前にした時に感じる「崇高」(サブライム) という概念が出てきます。

そう、グランド・ツアー、崇高 (サブライム)、そしてピクチャレスクは、一昨年受けていたオンライン講座「今だからこその江戸美術」で学んだキーワードだったのです (→ ブログ 『「今だからこその江戸美術」受講修了』。受講時PCの画面では具体的な作品をじっくりと見ることができなかったので、今初めて知識が繋がった感じです。

このあたりのことを、内覧会でレイトン卿と交互に解説された福島県・郡山市立美術館の富岡進一氏 (右写真) が語っておられます。

毎日新聞 2018/4/23 「ターナー 風景の詩」展 あす開幕 自然の崇高さ、畏敬の念込め 福島・郡山市立美術館主任学芸員 富岡進一さん

郡山市立美術館は、この巡回展がこのあと最後に行くのですね。

ストーンヘンジを描いた作品もありました。右はターナーが描いた作品。左はそれを版画にしたものです。

なお、写真は美術館の特別の許可を得て撮影したものです。

以下、美術展の情報です。

「ターナー 風景の詩」展
https://turner2018.com/
<会期> 4月24日(火)~7月1日(日)月曜休館(ただし4月30日は開館)
<会場> 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 http://www.sjnk-museum.org/
    (東京都新宿区西新宿1の26の1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)
<開館時間> 午前10時~午後6時
    (ただし5月9、16日、6月26~30日は午後7時まで)
<入館料> 一般1300円▽高大生900円▽65歳以上1100円▽中学生以下無料


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